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第4回:社員の「居る甲斐」が会社の未来を決める | 中小企業未来塾

第4回:社員の「居る甲斐」が
会社の未来を決める

第4回:社員の「居る甲斐」が会社の未来を決める

前回の振り返り:目的と目標の作り方が働きがいの基盤

前回、私たちは二宮厚美先生の「生きがいの源泉」の中でも、「豊かな目標・目的の追求」について学びました。

人間だけが持つ「未来を先取りする能力」を活かし、社員一人ひとりが自分なりの希望を描き、それを会社の方向性と重ね合わせて計画を立てる。このプロセスこそが、働きがいの第一歩でした。

しかし、目的や目標の作り方が大切なのは、それが次にお話しする「居がい」にも深く関わってくるからです。

社会的存在感としての生きがい

二宮先生は、生きがいの源泉を探る中で、神谷美恵子氏の次のような言葉を引用されています。

「生きがいを失った人に対して新しい生存目標をもたらしてくれるものは、何にせよ、だれにせよ、天来の天使のようなものである。君は決して無用者ではないのだ。君にはどうしても生きていてもらわなければ困る。君でなくてはできないことがあるのだ。ほら、ここに君の手を、君の存在を、待っているものがある。」

この言葉が示すのは、社会的存在感の重要性です。人は誰でも「自分は必要な存在なのだ」「自分でなくてはできないことがある」と感じられた時に、深い生きがいを感じるのです。

生きがいの二つの泉

二宮先生は、生きがいの源泉を二つの視点から整理されました。

豊かな目的・目標の追求(前回お話ししました)

社会的存在感の確証(今回のテーマです)

この二つが、甲斐の言葉に関する辞書的説明で言うところの「目的や課題に対する意識性」と「人をとりまく共感・応答関係の程度」に対応しています。

つまり、働きがいや生きがいは、自分が向かう目標があることとまわりの人に認められ必要とされることの両方が揃った時に、最も強く感じられるのです。

「生きがい」と「居がい」の発見

神谷氏と同様に生きがいの研究に取り組んだ島崎敏樹氏は、この二つの生きがい感をわかりやすく表現しました。

「生きがい」=未来の目標に向かって前進・追求していく時の生きがい

「居がい」=仲間とともに生きることから生まれる生きがい

島崎氏は言います。

「生きるとは、連れとともに不動の地盤の上に立ち、暗い過去を背負って、天を仰ぎながら、光にみちた未来へむかって進んでいくいとなみである」

この言葉が示すように、人は一人で未来に向かうのではなく、仲間とともに、支え合いながら歩んでいくものです。

中小企業での「居がい」の具体例

【事例1:地域密着型の電気工事会社】

A電気工事会社の社長は、毎月の安全会議で必ずこう言います。

「今月も皆さんのおかげで、地域の皆さんの生活を支えることができました。田中さんの迅速な対応で、B商店街の停電が早期に復旧しました。佐藤さんの丁寧な説明で、C保育園の園長先生がとても安心されていました。」

具体的に一人ひとりの貢献を認めることで、社員は「自分の仕事が地域の人に喜ばれている」「自分がいることで会社の評判が上がっている」という実感を持てるのです。

【事例2:小さな製造業での「頼み甲斐」】

従業員15人の精密部品メーカーでは、新しい技術的な課題が発生した時、社長が必ず「この件は○○さんに相談してみよう」と名指しで頼みます。

「溶接の件なら山田さんが一番詳しい」「品質管理なら鈴木さんに任せれば安心」「新人教育なら中村さんが適任」

こうして、一人ひとりが「自分の専門性が認められている」「困った時に頼りにされている」という実感を持てる環境を作っています。

時間と空間で理解する生きがい

二宮先生は、生きがいを時間と空間の二つの軸で整理されました。

時間軸(縦軸):「かけがえのない時間」を送ること

  • 将来の目標に向かって努力する過程
  • 目的実現のための時間を汗水で満たすこと

空間軸(横軸):「かけがえのない存在」であること

  • 社会的な空間での豊かな人間関係
  • お互いがあてにしあてにされる関係
  • 自分の出番や居場所・役割の存在感

第一の生きがいは「取り戻すことのできない時間」を意味深く過ごすこと。 第二の生きがいは「取りかえのきかない役割」を担うこと。

中小企業だからこそできる「居がい」づくり

大企業では難しい、中小企業ならではの「居がい」づくりのポイントをご紹介します。。

1. 一人ひとりの「出番」を明確にする

【実践例:建設会社での取り組み】

現場監督の田中さんは、毎朝の朝礼で必ず各職人さんに「今日の見せ場」を確認します。

「今日は左官の佐藤さんの技術が光る日ですね」「午後は電気工事の山田さんが主役になります」

単なる作業分担ではなく、「今日は君がチームの中心だ」というメッセージを込めることで、一人ひとりに出番と責任感を与えています。

2. 「頼み甲斐」のある関係性を築く

【実践例:印刷会社での工夫】

「この難しいデザインは、○○さんの感性でないと表現できません」 「お客様からの急な依頼、○○さんの段取り力でお願いします」

単に仕事を振るのではなく、「なぜあなたに頼むのか」の理由を明確にすることで、社員は「自分の能力が認められている」「頼りにされている」という実感を持てます。

3. 共感・応答関係を大切にする

【実践例:小売業での取り組み】

毎週の店舗会議で「今週の感謝の輪」という時間を設けています。

「今週は、○○さんの接客でお客様から感謝の電話をいただきました」 「□□さんの商品知識のおかげで、大きな成約につながりました」

お客様からの反響を社員全員で共有することで、「自分の仕事が価値を生んでいる」という実感を高めています。

「居がい」が失われる時の危険性

二宮先生は、人間関係の中で居場所を失うことの深刻さについても警告されています。

  • 「どうせ自分なんて」という無力感
  • 「誰も自分のことを理解してくれない」という孤独感
  • 「自分がいてもいなくても同じ」という存在感の欠如

こうした状態が続くと、どんなに給与が良くても、どんなに労働条件が整っていても、社員は会社に愛着を感じなくなってしまいます。

かけがえのない存在になるための3つの条件

二宮先生の理論を踏まえ、社員一人ひとりが「かけがえのない存在」として認められるための条件を整理します。

1. 能動的な自己表現の機会

  • 自分の能力を発揮できる場面があること
  • 固有の役割と出番が与えられていること
  • 「自分らしさ」を活かせる環境があること

2. 受動的な自己確証の体験

  • まわりの人から認められ評価されること
  • 自分の存在や貢献が適切に評価されること
  • 感謝や称賛の言葉を受け取れること

3. 継続的な関係性の構築

  • 一時的な評価ではなく、継続的な信頼関係
  • チーム全体での相互支援の文化
  • 長期的な成長を見守る環境

経営者として大切にしたい5つのポイント

1. 「○○さんでなければ」の表現を心がける

「誰でもできる仕事」ではなく、「あなただからお願いしたい仕事」として依頼する。

2. 具体的な貢献を言葉にする

「頑張ってるね」ではなく、「あなたの○○のおかげで××が改善されました」と具体的に伝える。

3. 社員同士の相互承認を促進する

社員が互いの良いところを認め合える仕組みを作る。

4. 失敗を責めない文化を作る

チャレンジを評価し、失敗を学習の機会として捉える風土づくり。

5. 長期的な視点で関係を築く

短期的な成果だけでなく、社員の人生に寄り添う姿勢を示す。

まとめ:「居がい」があってこそ「働きがい」が生まれる

二宮先生の理論で明らかになったのは、目標や目的(生きがい)と居場所や存在感(居がい)は、どちらも欠かせない生きがいの源泉だということです。

特に中小企業では、社員一人ひとりの顔が見える距離だからこそ、「君がいてくれるから会社が成り立っている」「あなたの存在が会社の財産だ」ということを、心を込めて伝えることができます。

次回は、これらの理論を踏まえながら、「かけがえのない時間、かけがえのない存在」について、より具体的な実践例と共に掘り下げていきます。

社員の皆さんが「この会社に居て良かった」と心から感じられる職場づくりのために、ぜひ次回もお読みください!

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